テニスの試合、何を記録すれば上達につながる?研究を手がかりに考える「まず見るべきスタッツ」

テニスの試合で本当に記録すべきスタッツを、サーブ・リターン・ラリー数・ショット位置・ウィナーとエラーに関する研究から解説。全部を記録しなくても続けられる方法と、Ouka Tennisでの実践方法も紹介します。

テニスの試合、何を記録すれば上達につながる?研究を手がかりに考える「まず見るべきスタッツ」

記録するだけでは、テニスは上達しない

高校でテニスをしていた頃、自分自身は試合のスタッツを細かく記録する習慣がありませんでした。

「試合の内容を数字として残せたら面白そう」と思って試したことはありましたが、実際には、

  • 入力する項目が多い
  • 何を記録すればいいかわからない
  • 記録した数字をどう練習につなげればいいかわからない

という問題があり、続きませんでした。

Ouka Tennisを作る中で改めて考えたのが、

テニスでは、何を記録すれば本当に上達につながるのか?

ということです。

スタッツの目的は数字を集めることではありません。

記録する → 試合を理解する → 課題を見つける → 練習を変える

この流れを作ることが重要です。

記録・理解・課題発見・練習のサイクル
記録・理解・課題発見・練習のサイクル
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研究でよく分析されている指標と、一般プレイヤーへの応用

テニスのパフォーマンス分析では、サーブやリターンだけでなく、ラリーの長さ、ポイントの終わり方、ショットの種類、打球位置など、さまざまな情報が使われています。1

ただし、こうした研究の多くはプロや競技レベルの高い選手を対象にしています。

そのため、

研究で重要だった数字 = 一般プレイヤーが最初に記録すべき数字

とは限りません。

この記事では、研究で使われている指標を手がかりにしながら、自分の試合で何が起きていたのかを理解するには何を見るとよいかという視点で考えます。

試合を見る5つの視点
試合を見る5つの視点
### サーブ:1stサーブ成功率だけでは判断しない

サーブを見るなら、

  • 1stサーブ成功率
  • 1stサーブ時ポイント取得率
  • 2ndサーブ時ポイント取得率
  • ダブルフォルト

を組み合わせて見る方が、試合の中身を理解しやすくなります。

2023年の全仏オープンと全米オープン男子シングルス253試合を分析した研究でも、1stサーブ成功率だけでなく、1st・2ndサーブ時ポイント取得率やリターンポイント取得率など、複数の指標を使って勝者と敗者が比較されています。2

例えば、

  • 1stサーブ成功率:68%
  • 1stサーブ時ポイント取得率:42%

なら、「もっと1stサーブを入れる」以外に、サーブコースや相手のリターン、サーブ後の展開を確認する余地があります。

逆に、

  • 1stサーブ成功率:42%
  • 1stサーブ時ポイント取得率:75%

なら、「入ったときにはポイントを取れているが、安定性に課題があるのでは?」という別の仮説を立てられます。

もちろん、この数字だけで原因を断定することはできません。

スタッツは答えではなく、「次にどこを見るか」を絞る材料です。

ダブルフォルトも、本数だけでなく試合の長さや2ndサーブ機会など、母数と一緒に見る方が比較しやすくなります。

リターン:相手のサービスゲームで何が起きているかを見る

サーブは印象に残りやすい一方で、リターンは見落とされがちです。

しかし、トップレベルの試合分析ではリターン関連の指標も重要な分析対象になっています。2

例えば、相手の2ndサーブに対してほとんどポイントを取れていないなら、

「ストローク全体を良くしよう」

ではなく、

2ndサーブへのリターンで何が起きているのか?

を確認した方が、課題は具体的になります。

リターン位置なのか、狙うコースなのか、その次のショットなのか。数字を入口にして考えます。

ラリー数:どの展開でポイントが終わっているかを見る

ラリー長は研究によって数え方が完全に統一されているわけではありません。Donaらもこの定義上の曖昧さを指摘し、サーブを最初のタッチとして数える方法を使っています。3

重要なのは、どの区切り方が唯一正しいかではなく、同じルールで記録し続けることです。

Ouka Tennisでは、サーブを1球目として、

  • 1球
  • 2〜3球
  • 4〜7球
  • 8球以上

の4区分で記録できます。

同じミスでも、リターン直後に終わったのか、6球目なのか、10球以上続いた後なのかでは意味が違います。

例えば長いラリーでは戦えているのに短いポイントを多く落としているなら、ラリー力そのものより、サーブ・リターンや最初の数球を確認する価値があります。

ポイントの終わり方:ウィナーとエラーを一緒に見る

ポイントの終わり方を見るときは、

  • ウィナー
  • フォーストエラー
  • アンフォーストエラー

などが使われます。

ウィナーが多ければ必ず良い試合、というわけではありません。同時に大量のエラーをしている可能性もあります。

また、相手を追い込んだ結果として起きたミスもあります。

一方で、フォーストエラーとアンフォーストエラーの区別には主観が入ります。Peirisらの研究でも、この分類の主観性が指摘されています。4

一般プレイヤーなら、最初から細かく分類せず、

  • ウィナー
  • エラー

程度から始めても構いません。

重要なのは、完璧な分類よりも、ある程度同じ基準で記録を続けることです。

ショット種類と打球位置:どこで何が起きたかを見る

さらに詳しく振り返るなら、

  • どのショットでポイントが決まったか
  • どのショットでミスしたか
  • どこに打ったか
  • サーブをどこに打ったか

まで見ることができます。

2026年の神藤・北濃・三橋の事例研究では、99試合・6,376ポイント・40,239ショットを記録し、ショット種類や位置からKPIを集計して、選手へのフィードバックにも利用しています。5

ただし、研究で位置を分析しているから、12分割コートが科学的に最適という意味ではありません。

研究でショット種類や位置が分析されている。その考え方を一般プレイヤーでも扱いやすくする方法として、Ouka Tennisでは12分割コートを採用しています。

「フォアが良かった」だけでなく、どんな場所で、どんなショットを使ったときにポイントにつながっていたのかまで見られると、振り返りはかなり具体的になります。


全部記録しなくていい。最初は3つから

ここまで紹介した項目を毎試合すべて記録するのは大変です。

自分自身も、細かく記録しようとして続かなかった経験があります。

だから、一度だけ完璧なデータを取ることより、必要な情報を継続して残せることの方が大切だと考えています。

Level 1:まず試合全体を見る

最初は、

  • 1stサーブ成功率
  • 1stサーブ時ポイント取得率
  • 2ndサーブ時ポイント取得率
  • リターンポイント取得率
  • ラリー数別のポイント取得率

まずはこの5つを見るだけでも、試合のどこでポイントを取れていて、どこで失っているのかが見えやすくなります。

たとえば、1stサーブ成功率は高いのに1stサーブ時ポイント取得率が低ければ、「サーブを入れること」よりも、その後の展開に課題があるかもしれません。逆に、短いラリーでは取れているのに長いラリーになると取得率が落ちるなら、ラリー戦でのミスやポジションを振り返るきっかけになります。

Level 2:なぜポイントを取った・落としたかを見る

慣れてきたら、

  • ウィナー / エラー
  • 決めたショットの種類

を追加します。

Level 3:どこで起きているかを見る

さらに詳しく振り返りたい試合では、

  • サーブ位置
  • 打球位置
  • 12分割コート分析

まで見ます。

この3段階は「研究でこの順番が最適と証明された」というものではありません。

研究で使われている指標を参考にしながら、記録の負担と得られる情報のバランスを考えてOuka Tennisとして提案している使い方です。


1試合だけで結論を出さない

スタッツを見るときは母数も重要です。

例えば同じ40%でも、

  • 5回中2回
  • 50回中20回

では、数字の受け取り方は同じではありません。

対戦相手やサーフェス、試合形式、その日の状態によっても数字は変わります。

そのため、

  • 最近5試合ではどうか
  • 勝った試合と負けた試合で違いはあるか
  • 数か月前より変化しているか

と、複数試合で見る方が役立ちます。

記録が増えるほど、自分の傾向が見えやすくなります。


数字を練習につなげる

スタッツの価値は、数字を見ることで終わりではありません。

大切なのは、

数字 → 仮説 → 確認 → 練習

につなげることです。

例えば、

1stサーブ成功率は高いのに、1stサーブ時ポイント取得率が低い

→ 「入れること」以外に課題がないか確認する
→ サーブ位置やサーブ後の展開を見る

相手の2ndサーブへのリターンポイント取得率が低い

→ リターン位置や狙うコース、リターン後の展開を見る

短いポイントで失点が多い

→ 長いラリーの練習だけでなく、サーブ・リターンと最初の数球を確認する

数字を見ただけで原因を決めつけるのではありません。

「もしかして、ここに課題があるのでは?」

という仮説を作り、実際のプレーや記憶、可能なら試合映像と照らし合わせる。

そこから次の練習を決めます。


Ouka Tennisでは、記録の深さを自分で選べる

Ouka Tennisの試合記録画面と分析画面
Ouka Tennisの試合記録画面と分析画面
Ouka Tennisで大切にしているのは、できるだけ多くのデータを入力することではありません。

記録を続けられることです。

結果だけ残したい試合

スコアだけ記録する。

少し詳しく振り返りたい試合

  • ラリー数
  • 決めたショット
  • サーブ位置

などを追加する。

本格的に分析したい試合

  • 12分割コートによる位置記録
  • ショット種類
  • 詳細なポイント情報

まで残す。

細かく記録したくない項目は飛ばして次へ進めるので、「全部入力しないと記録できない」という設計にはしていません。

蓄積した記録は分析画面で振り返ることができ、コート上の傾向や自分の強み・課題を確認できます。

さらにOUKA AIでは、蓄積した記録をもとに課題を整理し、次の練習を考えるためのサポートにもつなげています。

目指しているのは、数字をたくさん表示することではありません。

試合で起きたことを、次の練習につなげること。

それがOuka Tennisで目指していることです。


まとめ

テニスのスタッツには、これさえ見ればいいという一つの正解があるわけではありません。

一般プレイヤーなら、最初は、

  1. サーブ
  2. リターン
  3. ラリー数

くらいから始めれば十分です。

慣れてきたらショット種類や位置まで広げ、1試合だけで判断せず、自分の過去の試合と比較する。

スタッツは、テニスを数字だけで評価するためのものではありません。

「今日はなんとなくサーブが悪かった」という感覚を、

「1stサーブは入っていた。でも、そこからポイントを取れていなかった」

のように、次に確認できる形へ変えるための道具です。

そこから仮説を作り、練習を変えて、次の試合でもう一度確かめる。

その繰り返しが、試合の記録を単なる戦績ではなく、自分の上達を考えるためのデータに変えていきます。

試合を記録して終わりではなく、数字から課題を見つけ、次の練習につなげる。Ouka Tennisでは、試合結果やスタッツ、ショット位置などを記録し、自分のプレーを振り返ることができます。

次の試合から、Ouka Tennisで記録を始めてみませんか?

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参考文献

  1. Crespo, M., Martínez-Gallego, R., & Filipcic, A. (2024). Determining the tactical and technical level of competitive tennis players using a competency model: a systematic review. Frontiers in Sports and Active Living, 6. https://doi.org/10.3389/fspor.2024.1406846
  2. Raizada, S., Reddy, A., Biswas, S., & Sharma, R. (2025). Breaking down success: Game-related statistical analysis in tennis grand slams. Journal of Human Sport and Exercise, 20(3), 895–904. https://doi.org/10.55860/qm3vn826
  3. Epasinghege Dona, N., Gill, P. S., & Swartz, T. B. (2025). What does rally length tell us about player characteristics in tennis? Journal of the Royal Statistical Society Series A: Statistics in Society, 188(1), 188–204. https://doi.org/10.1093/jrsssa/qnae027
  4. Peiris, H., Epasinghege Dona, N., & Swartz, T. B. (2025). Analysis of the impact of unforced errors in tennis. International Journal of Sports Science & Coaching, 20(3). https://doi.org/10.1177/17479541251333943
  5. Jindo, T., Kitano, N., & Mitsuhashi, D. (2026). A method of data collection and research data creation for performance analysis of tennis matches and its practice. Taiikugaku Kenkyu (Japan Journal of Physical Education, Health and Sport Sciences), 71, 215–223. https://doi.org/10.5432/jjpehss.015-25094

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